セミリタイアを考えるときに、多くの方が「世間体」というものを気にするのではないでしょうか。
セミリタイアすると、いわゆる無職という状態になります(セミリタイアなのでアルバイトやパートをしている場合もありますが)。
「ご職業は?」と聞かれて、「無職です。」とか「フリーターです。」といった回答になりますよね。そうなると、決まりが悪く、まさに「世間体がよくない」ということでしょう。その意味で、肩書きがないというのは、案外不便を感じるところなのかもしれません。
しかし、本当に「世間体」を気にする必要があるのでしょうか。そもそも「世間」ってなんなんでしょうか?
私は、セミリタイアするにあたって別に世間体を気にする必要はないと思っているのですが、今回はそう考える理由を書いていきたいと思います。
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それは「世間」が許さない?
セミリタイアが、世間体がよくないと思われる理由はなんでしょうか。
おそらく、「世間」では健常な”まとも”な人間であれば、日中は仕事に行き、汗水垂らして、嫌なことも我慢し、下げたくない頭を下げ、そうしてようやっと夜に家に帰る。
そうやって苦労しながら生きていく・・・・というのが、暗黙の了解となっている。そして、その枠組みから外れたものをできそこないの人間として扱うのです。そんな人間に思われたくない、扱われたくないということ。これが「世間体を気にする」ということではないかと思います。
ここではあくまで「世間」というものがマジョリティの漠然とした「正しい」了解をもとにしていることが分かります。「世間」を持ちだす人は、往々にして「健全な常識」を自分が持っていると思っている。そして、そのことに何の疑いもない、自己批判精神のかけらもない人なのです。
しかし、そこにはそれだけでは語れない微妙な人間の感情というものがあるような気もする。
「世間」の本当の意味
次のような例を考えてみましょう。セミリタイアを考えているAが、会社の同期Bにそのことを打ち明けるという場面です。(すべて私の妄想です)
A:「今年いっぱいで会社を辞めて、セミリタイアしようと思うんだ。」
B:「セミリタイア?会社を辞めるって、辞めた後どうするんだよ。生活費はどうするんだ?」
A:「セミリタイアに向けて20代のころから貯金や投資をしてたから、資産は十分あると思ってる。何度もシミュレーションして大丈夫だと確信したんだ。」
B:「そんな夢みたいなことが世間で通用すると思ってるのか。そんなに世間は甘くないぜ。今はよくても、年をとってから後悔しても取り返しがつかないぜ。世間の厳しさが今に分かるさ。」
A:「僕はもう決めたんだ。セミリタイアを目標にこれまでがんばってきたんだから。」
B:「まあまあ、悪いことは言わないから、もう一度よく考えてみろよ。本当にそれでいいのかって。俺は、お前のためを思って言ってるんだ。」
A:「・・・」
どうでしょうか?BはあくまでAのためを思って忠告しているように見えます。しかし、実際はその言葉の節々、行間から「俺だってできることなら会社を辞めたい。なのに、お前だけがそんないい思いをすることが許されるのか。いや、許されない」という思いが感じられませんか。
Bは自分が得ることができないものを、うまくやって得ようとしている者(A)を必死の思いで阻止しようとする。そのために、「世間」というものを持ち出してストップをかけようとするのです。夢を打ち砕こうとするのです。
夢みたいな妄言はやめて、そして地に足がついた生き方を勧めてくるのです。あぁ、その世間という言葉を使う人自身が「世間」なのだなと思います。
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「世間」はどこにある?
このあたりのことを、うまく表現しているのが太宰治です。
太宰の「人間失格」から。
世間とは、いつたい、何の事でせう。人間の複数でせうか。どこに、その世間といふものの実態があるのでせう。―(略)―「世間といふのは、君ぢやないか。」といふ言葉が、舌の先まで出かかつて、堀木を怒らせるのがイヤで、ひつこめました。
(それは世間が、ゆるさない。)
(世間ぢやない。あなたが、ゆるさないのでせう?)
(そんな事をすると、世間からひどい目に逢うぞ。)
(世間ぢやない。あなたでせう?)
(今に世間から葬られる。)
(世間ぢやない。葬るのは、あなたでせう?)
そう、世間とは漠然とそのへんにあるものではなく、その言葉を使う人の中にあるものなのです。そして、「自分はこう思われているのではないか。こう思われたらいやだな」と他人の目を気にする自分自身の心の中に存在しているのです。
ですから、他人のことがどうでもよくなれば「世間体」を気にすることもなくなるのです。その意味で、孤独が好きな人や孤独が気にならない人は、セミリタイアに向いているかもしれません。
考えてみれば、1億人いる日本の人々の中で、どれくらいの人が私の生き方に興味を持っているでしょうか。99.9%の人は、私が生きようが野たれ死のうが構いやしないのです。
実態のない「世間」を気にするというのは、時間と労力のムダでしかありません。せっかくの人生なのですから、自分の好きなように生きたいですね。