【書評】「アダムの運命の息子たち」DNAが明かす人間の欲望の深淵

書評

貧富の格差、暴力、紛争・・・こうした現在の人間社会を作り出した影の存在は、実は「DNA」であるー

目に見えない、そして普段意識することのないDNAにそんな力があるとは、信じがたいのですが、今回紹介する本でそのことが明らかにされます。

著者のブライアン・サイクス氏は、遺伝学者で以前に紹介した「イブの7人の娘たち」と同じ人です。

前著が女性だけに遺伝する「ミトコンドリアDNA」に注目して、人類がどこからやってきたのか、その起源を探ったものだったのに対して、今回の本は男性だけに遺伝する「Y染色体」を巡る旅となります。

【書評】「イヴの7人の娘たち」遺伝子で辿る人類の遙かなる旅路
謎が「ミトコンドリアDNA」によって明らかにされていきます。人類はどこから来たのかーそれを明らかにしていくと、我々の祖先が辿った遙かなる旅路が見えてきます。

それはすなわち、「Y染色体」こそが、現在の人間社会を作り出したという壮大なお話でもあるのです。

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暴走するY染色体

「Y染色体」を通じて、なぜ生物には「オス」と「メス」があるのかといったことや、そして生物の行動に巧妙にDNAの生き残り戦略が組み込まれていることが明らかになります。

実は、私たち人間も「DNA」の生き残り戦略、つまりいかに自分のコピーを行き残させるかということの影響をモロに受けていることが分かります。

著者によれば、その始まりは人類が狩猟採集生活から農耕生活に変わったことにあると指摘しています。

農耕が始まることによって、そこに「所有物」「富」「権力」といったものが発生します。そして、持つ者と持たざる者の不平等、貧富の格差が発生し社会の層が誕生しました。

土地も家畜も持たない男性は低層に沈んでいき、より豊かな人たちの労働力となり、当然のことながら豊かな人たちが女たちを独占していました。

つまり、より多くの財産を持ち、より豊かになり、より権力をもつことが、「Y染色体」を多く子孫に遺伝させることになるのです。そのため、「Y染色体」の暗黙の指示を受けた男は、これらのものを追求することに熱中し始めました。このDNAに埋め込まれた記憶は当然のことながら現代人にも受け継がれています。

こうしてあくなき権力闘争、経済競争が延々と行われていった結果、現在のような人間社会になったと考えられるのです。

人間の欲望は果てしない

人間の、豊かになりたい、いい生活がしたいという欲深さは、遺伝子レベルでのものなのかもしれません。

もちろんそれによって人間社会は発展し、多くの人が数千年前には考えられなかったような豊かな生活ができるようになった一方、そこには多くの悲劇もあったはずです。

資本主義というのも、ある意味「豊かになりたい」という欲望を加速度的に増幅させる装置と言えます。世界経済は、何度も危機に会ってきましたし、これからもあるに違いありません。

でも、人間に埋め込まれたDNAがある限り、どうやらその欲望に終わりはなさそうです。きっと、資本主義も株価も長い目で見れば増幅し続けることは遺伝子レベルで間違いなさそうです。

本書では、将来的に「Y染色体」の劣化により、男性が絶滅していまう可能性も示唆されていますが、少なくとも私たちの世代には関係なさそうです。

まあ、私は人類が絶滅してもなんとも思いませんが。

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会社に行きたくない~セミリタイア15ヵ年計画~